【日本の性教育】フィンランドでは幼稚園から段階を追って教えています
【改訂あり】この記事は、2021.01.23のこちらの改訂版ブログをご覧ください
望まぬ妊娠が 460人/日
2016年の厚生労働省の統計では1日460人が日本では中絶をしています*5。 妊娠した女性のうち6人に1人が中絶しているという現実があります。 望まぬ妊娠を防止するため、各国の性教育と日本の差を比較して、何がいいのかを考えていきたいと思います。
20代の会社員の中絶の事例 *2
- 2020年春、関西に住む20代の会社員、アヤさん(仮名)が体調の変化を感じて受診した産婦人科で、全く心の準備がないまま突然「妊娠」を告げられました
- 動揺で身体は震え、アヤさんは心の整理がつかず、親にも交際相手にも相談できないまま、1人で中絶手術に臨みました
- 交際相手の男性とはお互いに避妊をしていたと思ってきましたが、結果的にその方法は、正しく避妊したことにはなっていなかったことが分かったといいます
- アヤさんは学校で性についての正しい知識を教えてほしかったと話していました
様々な避妊の情報が書かれているサイトから
- 『バイト先の店で店長に無理やりセックスをされました』
- 『初めてセックスをしたとき、彼が避妊をしてくれませんでした』
2016年の人工妊娠中絶件数 *5
- 2016年 168,015 件 (460件/日)
- うち、20代未満 14,666 件 (40件/日)
海外の性教育の考え方 *1,2,3,4
- 英国では子どもが性被害に遭いやすいことは共通の理解としてあり、子どもを守るための制度が徹底されてます
- フィンランドでは、1970年から、幼稚園段階で、家族の多様性や、他の子が触って欲しくないと思っている場所を触ることはだめ、といったことを伝えます
- セックスについても、大人が恥ずかしがって話さないと「セックスや子どもができることは悪いことなんだ」と思ってしまいます
- 正しい情報を得ることで、子どもたちは予期せぬ妊娠や性感染症を防ぐことができ、幸せな人生を送れます
- 性教育をしないと「他の子はもうセックスをしているのでは」と疑心暗鬼になりますが、正しく知れば「早く経験しなくちゃ」とは思いません
- 学校でコンドームを配布した時にも「セックスを助長する」というような議論はありませんでした。セックスする時はコンドームがあろうとなかろうとしてしまいます。それなら持っていたほうがいい。シンプルなんです
【出典】
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*1 朝日新聞DIGITAL 2018.10.22 性教育、海外の事情は 日本は「井の中のかわず」
https://www.asahi.com/articles/ASLBJ5WVJLBJUTFL00X.html - *2 NHK News Web 2020.10.06 変わるか 日本の“性教育”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201006/k10012648811000.html -
*3 GENDAI 2018.05.02 日本が性教育の「後進国」になりつつあるのをご存じですか 中学校で「性交」の語は使用禁止?
NPO法人ピルコン 染矢 明日香 理事長
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55432 -
*4 Hanakoママ 2020.12.25 海外の性教育はこんなに進んでいるの?私たちが学ぶべきことは?
https://hanakomama.jp/education/105873/ - *5 厚生労働省 2016年 人工妊娠中絶件数
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka6.pdf
日本の教育界の現状
日本の性教育の現状 *2
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日本の小中学校の授業では性行為や避妊はほとんど取り扱われていません
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中学1年生では、成長に伴い男女の体がどのように成熟していくか。ヒトの受精卵がどう胎内で成長するかを学びます。
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しかし教科書は、その前提となる性行為には触れていません。ましてや避妊方法などほとんど教えないのが実態なのです
日本の政治・教育委員会の対応 *3
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2018年3月、東京都内のある区立中学校で行われた性教育の授業が不適切だとして、自民党の古賀俊昭都議が都議会で質問し、それを受けて都教育委員会は、関係者への調査・指導を進めるという答弁を行いました
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中学3年生を対象に、「思いがけない妊娠をしないためには、産み育てられる状況になるまで性交を避けること」とした上で、避妊について伝えた
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授業の事前アンケートでは、「高校生になったらセックスしてもよい」と答えた生徒が44%いたことをふまえ、高校生になると中絶件数が急増する現実や、コンドームは性感染症を防ぐためには有効だが、避妊率では9割を切ることなどを取り上げたと言います
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その中学校がある地域では、10代での思いがけない妊娠・出産や、そこからつらなる貧困の連鎖も目の前の現実として悩みの種になっており、高校に進学しても、すぐに中退してしまうケースなどもあったことから、生徒と保護者のニーズに応じて、この授業を実施したものだったといいます
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都教育委員会では、この授業について、「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」といった言葉を使って、こうした内容を説明した点が 「中学生の発達段階に合わない」 とし、課題があったと指摘しています。
性教育は「基本的人権」 *2
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海外では、性教育を保障することは「性の権利」の重要な一部であるため、基本的な人権の重要な部分を担うものとして広く認知されています
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2009年には、ユネスコ=国連教育科学文化機関が中心となって、包括的性教育の枠組みを示す「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を公開し、ヨーロッパの各国やアジアでも台湾などがこのガイダンスを踏まえて性教育の方針を出しています
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それらと比べると日本の教育はまだ遅れているといわざるをえませんが日本も「自分の身を守る」、「相手を大切にする」ために小さいながら大事な一歩を踏み出す必要があると思います
海外の性教育の例
包み隠さず伝える ドイツ *2
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2020年9月、ドイツ東部の公立学校で、日本の中学1年生にあたる生徒たちが生物の授業で学んでいたテーマは「避妊」
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机の上には、さまざまな避妊具や避妊薬が置かれ、生徒たちは直接手にとって観察
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コンドームを木製のペニスの模型に装着する練習も行われ、裏表を間違えないように、コンドームの先端に空気を入れないように、注意しながら行っていました
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生徒の反応は: 印象的だったのは、生徒たちからクスクス笑いやてれるようなしぐさがほとんど見られず、男子も女子もお互いに真剣な表情で意見や質問を交わしていたことです
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教師と生徒との信頼関係はもちろん、生物学として客観的に扱うことで、性のテーマに付随しがちなエロチックな側面がそぎ落とされていると感じました
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ドイツでは州ごとに教育のカリキュラムが異なりますが、生物学的な内容や避妊の方法、それに性暴力など包括的な性教育を行おうということで各州が一致しているそうです
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生徒たちが使っている教科書では、コンドームやピルはもちろん、子宮やちつの中にいれて使う避妊具なども写真付きで詳しく紹介されていました
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授業を担当した生物の教師は正しい知識を包み隠さず伝えることが重要だと言います
台湾でも踏み込んだ性教育 *2
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性教育は「ジェンダー平等教育」の名目で行われ、男女平等の重要性、「男らしさ」「女らしさ」といったステレオタイプの解消など幅広く扱います
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中学生の性行為が適切か適切でないかではなく、中学生でも性行為をする生徒がいるという現実を踏まえ、中学2年から「避妊の方法」について学びます
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自分の身を予期せぬ妊娠や、性感染症などから守るためです
イギリス 動画で親しみやすく *1
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パンツをはいたかわいい恐竜「パンツサウルス」たちがリズミカルに歌うアニメーション動画。英国の子どもの虐待防止協会(NSPCC)が行っている子どもたちを性被害から守るための「PANTS」キャンペーン
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性器など下着で覆われている「プライベートパーツ」の重要性を子どもでもわかるように説明
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「誰かがパンツの中を『見せて』と言ったり、触ろうとしたりしたら、絶対『NO』と言おう」
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「(そのことを秘密にしようといわれても)信頼できる人にすぐ教えよう」などと呼びかけます
フィンランド 必修化、幼児にも伝える *1
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フィンランド・ヴァンター市の小中一貫校で生物と保健の授業を受け持ち、性教育を教えるマリアンネ・ペルトネン教諭からのお話です
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性の情報は社会にあふれていますが、真偽を見極める幹となる部分を教えるのが学校の役目。しっかりした家庭の子は家で知識を得られますが、守られていない子もいる。高校に進学しない子もいるから、義務教育の間にきちんと性教育をしておかないといけません
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中学1年では、生物学として生殖器の役割を教えます。
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中学2年生では避妊について伝え、実際にコンドームの袋を開けるところから模型につけるまでやってみます
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使用期限があることや、コンドームが破れていないかを確認することも伝えます
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付き合いについて「男子はセックスを重視しているかもしれないけど、女子にとっては違う」という話もします
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中学3年では、生物的に赤ちゃんが産まれるまでを扱い、保健では「子どもができた場合、生物学的な父親は1人しかいない。その責任が取れるか」ということを話す
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性教育が義務づけられるようになり、この15年ほどで10代の出産、中絶数が減ってきているので、教育効果が出ているのではないかと思います
フィンランド・ヘルシンキ大学のユッカ・レヘトネン主任研究員 *1
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当初、どう教えたらいいかためらう教員からの反対はありましたが、保護者は「必要な情報だから学校で教えてほしい」という意見でした
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2000年代初頭には必修化されました
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学校で性教育をしなければ、子どもたちはネット情報などに頼ることになります
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幼稚園段階では、家族の多様性や、他の子が触って欲しくないと思っている場所を触ることはだめ、といったことを伝えます
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小学生には「お父さんにはペニスと精子、お母さんにはヴァギナと卵子があり、一緒になって赤ちゃんができる」と伝えればいい。シンプルな話です。多くの子どもたちが「どうして赤ちゃんができるの?」と興味を持つのは普通のことですから
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大人が恥ずかしがって話さないと「セックスや子どもができることは悪いことなんだ」と思ってしまいます
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より良いセックスは、より良い人生と人間関係を育むことになります。正しい情報を得ることで、子どもたちは予期せぬ妊娠や性感染症を防ぐことができ、幸せな人生を送れます。性教育をしないと「他の子はもうセックスをしているのでは」と疑心暗鬼になりますが、正しく知れば「早く経験しなくちゃ」とは思いません。学校でコンドームを配布した時にも「セックスを助長する」というような議論はありませんでした。セックスする時はコンドームがあろうとなかろうとしてしまいます。それなら持っていたほうがいい。シンプルなんです。
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きちんとした性教育をしなければ子どもを危険にさらす。深刻な問題なのです。状況を変えるのは政府や決定権者の責任。「教えるべきでない」と言われると教師はリスクを取りにくいから、トップが変えるべきだと思います
インド 「正しい」結婚が前提、タブー感強く *1
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インドでは、中学、高校段階で「生物」の授業で出産の仕組みを学びますが、性交や避妊まで触れていないようです
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背景にあるのは、カーストによる身分制に基づく「正しい」結婚です。出産は「正しい」結婚の枠内にあるべきで、性生活を結婚の中に閉じ込めることになります
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一方で、大都市の大学では女子学生が中絶をした話をよく聞きます
韓国 *1
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韓国では小学5年生の保健科で性暴力に遭いそうになった時の対応方法や、実際に被害に遭った時の相談先なども載せています
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中学ではコンドームの装着方法を教えています
UNESCO ユネスコ *1
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ガイダンスは性の多様性を重んじ、「子どもや若者が性的・社会的にも責任ある判断と選択ができる知識やスキル、価値観を持つこと」を第一の目的にしています
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「生殖」に関する項目では、5~8歳の段階で「赤ちゃんがどこから来るのかを説明する」を目標とし、9~12歳の段階で基本的な避妊方法についても確認することが掲げられています
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2019年1月にガイダンス第2版で、性暴力などについての項目が増えました
まとめ
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
性教育には賛否両論があり、それが日本の性教育の現状なのかもしれませんが、一方では、2016年で1日460人が日本では中絶をしている現実があります。
その中でも「性行為と妊娠のリスク」ついての正しい知識がないために、望まない妊娠に至った例があることも事実です。
正しい知識を得る機会が増えることを祈っています。
2016年の人工妊娠中絶件数 *5
- 2016年 168,015 件 (460件/日)
- うち、20代未満 14,666 件 (40件/日)
海外の性教育の考え方
- 大人が恥ずかしがって話さないと「セックスや子どもができることは悪いことなんだ」と思ってしまいます
- 正しい情報を得ることで、子どもたちは予期せぬ妊娠や性感染症を防ぐことができ、幸せな人生を送れます
- 性教育をしないと「他の子はもうセックスをしているのでは」と疑心暗鬼になりますが、正しく知れば「早く経験しなくちゃ」とは思いません
- 学校でコンドームを配布した時にも「セックスを助長する」というような議論はありませんでした。セックスする時はコンドームがあろうとなかろうとしてしまいます。それなら持っていたほうがいい。シンプルなんです